少子高齢化をはじめとしたさまざまな背景から、業務改善を図る企業が増えています。特に、総務の業務は細かい事務作業が多いことから、効率化したいと考えている企業が多いのではないでしょうか。一方で、具体的にどのように業務改善を実施したらよいのか、悩んでいる人もいるでしょう。
当記事では、総務において業務改善が必要な理由や具体的なアイデアなどを詳しく紹介します。事例も踏まえて解説するため、総務の業務改善に悩んでいる総務担当者や経営者は、ぜひ参考にしてください。
目次
総務の業務改善が求められる4つの理由
自社における総務の業務改善の必要性を判断するには、そもそもなぜ業務改善が求められるのか、その背景を知ることが重要です。業務改善には、組織の生産性を高めるうえで多くのメリットがあります。
ここでは、総務の業務改善が求められる4つの理由を具体的に解説します。
業務内容が幅広くタスク管理が困難となりやすいため
総務の業務は、組織全体に関わる内容が多いため、備品管理や施設管理などの事務作業から、来客対応や秘書業務などの対人業務まで多岐にわたります。業務内容が幅広いため、タスク管理が困難になりやすく、その中でも仕事を効率的にこなすために業務改善が行われることが多い傾向です。
総務は、業務の種類が多岐にわたるだけでなく、取り扱うデータ量も多くなります。限られた人員でも総務の業務をこなすには、データを一元的に管理して、複数の作業を同時に行えるような仕組みを整えることが必要です。
業務の属人化が起こりやすいため
総務の業務は、基本的に専門性が求められる内容ではないため、マニュアルなどを作って統一的な対応を図ろうとするケースが少ない傾向です。そのため、業務の属人化が起こりやすく、結果的にチーム内での連携が取りにくくなります。
業務が属人化すると、担当者が不在になったときに、業務が回らなくなったり、質を大きく低下させたりすることになります。また、特定の担当者にノウハウや経験が偏り、他の従業員が成長する機会を減少させることにもつながるでしょう。
慢性的な人手不足に陥っているため
近年の日本では少子高齢化が進んでおり、多くの企業は慢性的な人手不足に陥っています。特に総務のように利益に直接つながらない部署は、人材の補充の優先順位が下がりやすい傾向にあるため、人手が足りずに業務が停滞するケースが珍しくありません。
少ない人員でも総務の幅広い仕事をこなすためには、業務改善によりできるだけ無駄をなくし、効率的に取り組むことが求められます。また、連携を深めるための工夫も必須だと言えるでしょう。少子高齢化は今後も進行すると見込まれているため、総務の人手不足に悩む企業は、可能な限り早いうちに対策を考える必要があります。
業務成果の目標設定が難しいため
総務の業務は、成果を定量的に判断できない内容が多いため、目標設定が難しくなりやすい傾向にあります。例えば営業職であれば、契約獲得数や売上などから成果を判断できるものの、総務の場合は同じように数値を用いた目標設定ができません。とはいえ、目標設定が難しいからといって何もアプローチをしなければ、従業員の努力が正当に評価されず、モチベーション低下や離職につながってしまいます。
総務の業務を正当に評価するためには、客観的な評価が可能な体制を整えなければなりません。そのためには、現在の社内における総務の業務の在り方を見直す必要があるため、業務改善に着手する必要があります。
総務の業務を効率化するためのアイデア5選
では、具体的にどのように総務の業務を効率化させるとよいのでしょうか。総務の業務改善につながる取り組みは、大きく分けて5種類あります。ここでは、総務の業務を効率化させるための5つのアイデアについて、取り組みの内容や必要性などを具体的に解説します。
(1)業務の見える化
業務の見える化を進めることで、個々が担当している幅広い業務が一目で把握できるようになります。優先すべき業務が判断しやすくなり、生産性や効率性が大きく向上するでしょう。また、見える化した情報をチームメンバーに共有すれば、抱えている業務内容や進捗状況を周囲がわかるようになり、属人化の防止にもなります。
さらに、見える化した内容を細分化すれば、業務の振り分けに活かすことも可能です。負担が大きい業務に多くの人員を充てたり、反対に負担が少ない業務の人数を削減したり、適切な人員配置が実現すれば、総務全体の生産性が高まります。
(2)無駄な業務の排除
無駄な業務を積極的になくすことも、総務の業務改善につながります。総務の業務は、ルーティンで行う内容が多いため、前例踏襲の傾向が強く、知らないうちに多くの無駄が生まれている可能性があります。
例えば、勤怠管理を紙ベースで行っている場合、全員分の用紙を毎月印刷・配布し、月末には回収しなければなりません。これでは、総務だけでなく、組織全体の従業員にとっても負担となります。業務改善を実施してデータで管理したり、タイムカードを導入したりすれば、手間もコストも軽減されるでしょう。
一度自社の業務を見直した上で、無駄をあぶり出し、排除に向けた取り組みを進めることがおすすめです。
(3)業務マニュアルの作成
業務マニュアルの作成も、総務の業務を効率化させるために効果的な方法の1つです。総務の業務は属人化しやすいことから、マニュアルが作られていない企業が少なくありません。しかし、ルーティン業務が多いため、一度マニュアルを作成すれば長期的に活用できます。今後担当者が変わったとしても、業務の生産性を維持することが可能です。
また、マニュアルを作成する過程では、現在個々が対応している業務を整理するため、課題を浮き彫りにできるメリットもあります。課題改善に向けたアプローチをチームで考えることで、業務の効率性・生産性が短期間でアップするでしょう。
(4)アウトソーシングの活用
近年は、総務の業務の一部をアウトソーシングする企業も増えています。アウトソーシングは、自社のリソースだけでは足りない場合でも、業務改善を図ることができる点がメリットです。
アウトソーシングするのは、日常的に発生する業務がおすすめです。例えば、文書管理をアウトソーシングすれば、紙ベースでの管理からデータベースの管理になり、ファイリングの手間や保管コストが軽減されます。また、書類をデータから検索できるようになるため、業務で何らかの情報が必要になった際に、探す時間が短縮される点も特徴です。
なお、アウトソーシングにかかる料金や対応範囲は、業者によって異なります。自社の予算感やニーズに合わせてアウトソーシング先を検討し、まずは詳細を問い合わせてみるとよいでしょう。
(5)ITツールの活用
DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている近年、ITツールの活用も、総務の業務を効率化させるための有効な方法となっています。ITツールを使えば、煩雑化された業務を一元的に管理できるようになり、業務の可視化も実現します。
例えば、RPAツールと呼ばれる定型作業の自動化ツールを使えば、単純なデータ入力やフォーマットに沿った書類作成などの事務作業の効率化が可能です。ITツールを導入すると、日々の業務におけるヒューマンエラーの防止にもつながります。導入費用や運用費用は発生するものの、長期的に見るとコストパフォーマンスが高くなるケースが多い傾向です。
総務部門における業務改善の成功事例3つ
自社で実際に業務改善に取り組む際には、他社の事例を参考にすることがおすすめです。前もって事例を知ることで、「このようなケースもあるのか」と、自社での取り組みにおけるイメージの具体化にもつながります。
そこで次に、総務部門における業務改善の成功事例を3つ紹介します。
事例(1)アウトソーシングの活用で属人的な業務を排除
【業務改善の内容】
これまでルーティンで行っていた業務のフローをすべて見える化し、必要な業務と不必要な業務を整理しました。その上で「自社で対応する必要がない」と判断した業務は、外部の専門家にアウトソーシングして効率化を図りました。
【業務改善の結果】
従業員が本来力を入れるべきコア業務に集中できるようになり、総務全体の生産性が向上しています。また、自社での対応が不要だと考える業務をアウトソーシングしたことで、属人的な業務が排除されました。
事例(2)社内システムの見直しで無駄な業務を排除
【業務改善の内容】
リモートワークが社会的に広まってきたことから、従業員が離れた場所で働いていても効率的に業務に取り組めるよう、社内システムを見直しました。その結果判明したのが、オフィスで勤務している際は当たり前だと思っていた業務が、ルーティンとして行われていただけであり、実際は必要なかったことです。これを機に、無駄な業務を思い切ってなくそうと決断し、業務改善に取り組みました。
【業務改善の結果】
社内システムの見直しに伴って無駄だとわかった業務に併せて、関連した業務の無駄もあぶり出し、排除しました。結果として、自社にとって重要な業務だけが残り、生産性や効率性が高まっています。また、やりがいのある仕事だけが残ったことで、従業員のモチベーションが高まり、これまで以上に積極的に仕事をするようになりました。
事例(3)ITツールの導入で社内書式のクラウド化・統一化
【業務改善の内容】
総務で取り扱っていた書類の書式が統一されていなかったため、従業員が毎回1から作成する手間が発生していました。また、従業員ごとに書式が異なることが、連携や引き継ぎの面でもデメリットにもなっていました。そこで実施したのが、ITツールの導入による社内書式のクラウド化・統一化です。
【業務改善の結果】
書式が統一化されたことで、書類作成に関する余計な業務が排除され、スピード感が上がりました。さらに、これまではエクセルで管理していたデータがクラウド上に保存されるようになり、情報をすぐに共有できるようになっています。総務内だけでなく、他部門とのデータ共有もスムーズになり、組織全体に好影響が生まれています。
【5STEP】総務の業務改善の具体的な進め方・手順
総務の業務改善を進めるにあたっては、下記5つの流れを踏むことが一般的です。
STEP(1)現状把握 | まずは、課題を明らかにするために、現状を整理することから始めます。各業務における「重要度」や「工程数」「時間」「担当している人数」などを整理しながら、現状ではどのように仕事が進められているのかを具体的に整理してください。 |
STEP(2)課題抽出 | 次に、整理した現状を確認しながら、課題を抽出します。例えば、重要度が高い仕事なのに時間がかかっているのであれば、工程やかける人数を見直す必要があるでしょう。上司が客観的に判断するだけでなく、実際に担当している従業員の声を聞くことも大切です。 |
STEP(3)計画策定 | 課題の内容を踏まえて、どのようなアイデアが最適かを考えながら、業務改善の計画を策定します。業務改善には、コストや労力がかかるため、重要度や課題の大きさなどから優先順位を付けた上で、計画を立てるとよいでしょう。 |
STEP(4)業務改善の実施 | 策定した計画に沿って、実際に業務改善を実施します。実施途中にトラブルが発生したり、うまく進まなかったりした場合は、計画に問題があった可能性があるため、すぐに見直すことが必要です。 |
STEP(5)効果測定 | 業務改善を実施したら終わりではなく、効果があるかどうかを確認します。効果がない、あるいは薄い場合は、現状把握や課題抽出に戻って同様のサイクルを繰り返すこともあります。 |
業務改善を進める上で大切なのは、PDCAサイクルを繰り返すことです。特に、業務改善に慣れていない企業では、最初はうまくいかない場合もあるため、PDCAを繰り返すことが、より効果の高い取り組みの実現につながります。
総務の業務改善を実施する際に注意すべきポイント
総務の業務改善を効果的に進めるためには、注意すべきポイントもあります。注意点を理解しておかなければ、取り組みを進める中で行き詰りやすくなるため、事前に把握して計画に落とし込むことが大切です。
ここからは、総務の業務改善の実施にあたって注意すべきポイントを3つ紹介します。
施策の定着までに時間やコストがかかる
企業にとってそれまで当たり前であった業務を変えることになるため、業務改善の施策が定着するまでには、一定の時間やコストがかかります。「短期間で効果を出そう」とは考えずに、長い目で施策を進めることが重要です。
自社に適していないツールを導入しようとすれば、最終的に定着せず、余計な時間とコストだけが発生し、かえって無駄が増える可能性もあります。できるだけスムーズに浸透させ、大きな効果を得るためにも、「自社に最適な施策なのか」「費用対効果は高いのか」について、事前に確認することが大切です。
業務改善の目的が共有されていなければ成果が出にくくなる
業務改善を行う目的が共有されていないままでは、成果が出にくいことも理解しておく必要があります。業務改善の結果、組織に何がもたらされるかを従業員が把握していなければ、「業務改善」自体が目的になり、いわゆる「手段の目的化」が起こる可能性が高くなるためです。
目的を共有するためには、計画を立て、施策を実施する前の段階で、従業員からの理解を得ることが大切です。目的が組織に行き渡るよう、研修を開いたり、周知用のコンテンツを作成したり、何らかの工夫を検討しましょう。目的が共有された状態で業務改善を始めれば、組織が同じ方向を向きながら進むことができます。
業務の効率化を求めるあまりクオリティが落ちる可能性がある
業務の効率化に意識がいきすぎるあまり、クオリティが低下するケースも少なくありません。効率性を求めて作業スピードを上げると、一つひとつの業務が中途半端になりやすいためです。一度に多くの業務をこなそうとすることで、結果的に手一杯になったり、ミスが起きやすくなったりもします。
業務改善によるクオリティの低下を防止するためには、従業員が余裕を持って仕事できるよう、丁寧に施策を進めることが重要です。そうすることで、結果的に施策がしっかりと組織に定着し、業務改善による効果が高くなります。
総務の業務改善におすすめの業務アプリ作成ツール
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まとめ
業務内容の幅広さや慢性的な人手不足などから、近年は多くの企業が総務の業務改善に取り組んでいます。アウトソーシングやITツールの活用など、業務改善にはいくつかの方法があるため、自社に合う施策を検討することが大切です。実施にあたっては、時間やコストがかかることも把握しておきましょう。
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