近年はデジタル技術の進歩や消費行動の変化などを背景として、DX推進が企業にとって重要な課題となっています。企業がDX推進を実現するにあたり、必要とされている取り組みが「社内DX」です。
DXに課題を感じている企業経営者の中には、社内DXとは何か、どのように取り組めばよいかを知りたい方が多いでしょう。
当記事では社内DXの説明から、推進が必要な理由と主な取り組み例、社内DXを成功させるためのポイントやおすすめツールまでを徹底解説します。
目次
社内DXとは?
社内DXとは、社内でDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを推進・実行することです。
そもそもDXは、デジタル技術を活用して業務プロセスやビジネスモデルに変革を起こす「デジタル変革」を意味する用語です。AI・IoT・ビッグデータなどのデジタル技術によって企業に変革を起こし、変革を社会全体にも波及させることがDXの目的とされています。
企業の変革や社会全体の変革と聞くと、DXは規模が大きくハードルの高い取り組みであると感じる方も多いでしょう。
しかし、DXの取り組みは業務プロセスの一部にデジタル技術を活用するなど、小さな事柄からでも始められます。小さな事柄であっても、まずデジタル技術活用のきっかけを作り、そこからDX推進の流れを作ることが、社内DXを進める意義です。
社内DXが必要とされている3つの理由
近年、経済産業省による産業界へのDX推進など、社会的なDX推進の流れは急速に広がっています。企業のDX推進の第一歩が社内DXであるため、社内DXの必要性は高まっていると言えるでしょう。
ここでは、社内DXが必要とされている3つの理由を解説します。
働き方改革の実現のため
2018年6月に成立した「働き方改革関連法」では、企業に対して多様な働き方の実現や長時間労働の是正が求められています。将来的な労働人口の減少、ひいては人手不足が予測されている日本の企業において、働き方改革を実現するためには社内DXが必要不可欠です。
社内DXを行うと各種業務のデジタル化・システム化ができるため、業務負担の軽減や時短勤務制度の導入につながります。オンライン化ができる分野であればリモートワーク導入もできるでしょう。
業務効率化・生産性向上のため
人手不足の対策としては、業務効率化・生産性向上を図ることも大切です。社内DXはデジタル化などによって業務の無駄を省き、情報の蓄積・共有ができる体制を作れるため、業務効率化・生産性向上が実現できます。
企業の中には、古い技術・仕組みで構築されたレガシーシステムを業務で使い続けているケースが少なくありません。レガシーシステムは新しい技術との連携ができないものが多く、操作面や整備面で多くの労力・コストがかかっています。
社内DXを進めるとレガシーシステムの脱却も図れるため、企業の生産性・競争力の大きな強化も期待できるでしょう。
全社的なDX推進につながるため
社内DXでデジタル変革を進める範囲は基本的に社内のみであり、顧客・取引先など社外にも影響する大規模なDXと比べてコントロールしやすい点が特徴です。大規模なDXにはなかなか取り掛かれない中小企業も、社内DXであれば自社のリソースや社員の反応を確認しながら実行できます。
まずは小規模なケースでデジタル化の効果を確認できれば、次はより規模を大きくしたDXの取り組みも行えるでしょう。社内DXを継続することでDXの効果を社員も信じられるようになり、全社的なDX推進につなげられます。
社内DXの主な取り組み例
DX推進や社内DXは現代の大きな潮流であるものの、「自社の業務でデジタル化ができるのか」と不安になる方は多いでしょう。
社内DXの取り組みができる範囲は意外と広く、多くの企業は何らかの業務でデジタル技術の活用ができます。
下記で紹介する社内DXの主な取り組み例を参考に、自社ができる取り組みを検討してみてください。
ペーパーレス化
ペーパーレス化は、社内DXの第一歩として始めやすい取り組みです。
紙媒体の書類をデジタル化して、社内サーバーやクラウドストレージに保管します。社内システムから閲覧できることはもちろん、書類の承認・決済業務もシステム上で行えるように変えていくことで業務効率化が可能です。
顧客情報や売上データもデジタル化すれば、販売計画や営業計画を立案する際にスムーズな情報収集ができます。
デジタル化したデータは紙とは違ってかさばらず、保存・管理のコストが省ける点もメリットです。
業務プロセスの自動化
業務プロセスの自動化とは、従来の業務にAIやソフトウェアを活用して、人間の代わりに機械が作業を行うことです。
業務プロセスの自動化が実現できるツールは、主に下記の3つがあります。
RPA | データ入力・集計などの処理を自動で行う |
ワークフローツール | 申請・承認など業務上の手続きをシステム化できる |
統合運用管理ツール | ITシステムを一元管理し、データの活用・連携や分析を行う |
自動化ができるツールは、特定の処理手順に沿った作業を得意とする点が特徴です。導入したい業務が自動化できるかを検討した上で、業務の性質に合ったツールを選択しましょう。
業務環境のオンライン化
業務環境のオンライン化は、オンライン会議ツール・チャットツールの活用や、テレワーク環境の整備を行うことで実現できます。現在オフィスで行っている業務がオンライン化できないかを検討してみましょう。
たとえば勤怠管理・人事評価などの人事業務は、社内システムをクラウド化することでオンライン化ができます。営業業務のオンライン化も、メール・DMなどを活用するインサイドセールスの導入により実現可能です。
社内DXが進まない3つの要因
社内DXは多くの企業が取り組むべき課題であるものの、なかなか社内DXが進まない企業は少なくありません。
社内DXが進まない企業には、DXの取り組みを妨げる何らかの要因が存在します。
ここでは、社内DXが進まない3つの要因を詳しく解説します。DXの取り組みを進める企業は、以下で紹介する要因がないかをチェックしましょう。
DXに対する経営層の理解不足
「現状でも業務に支障がないのに、DXが必要だろうか」と経営層がDXに理解を示していない企業は、社内DXが滞ります。社内DXを進める上では、社内の施策・取り組みについて決定権を持つ経営層の理解が必要であるためです。
経営層がDXの必要性を感じていないと、社内DXを進めるための設備・システムへの投資でなかなか承認を得られません。DXについての積極的な情報発信も行われないため、社員への共有も進まないでしょう。
社内への共有不足
DXを進める目的や優先事項について社内への共有ができていない状態も、社内DXが進まない要因の1つです。
トップダウン式に社内DXを進めようとしても、社内にDXの意識が浸透せず、社内調整が難航します。結果としてDXの目的や優先事項が社員にほとんど共有されず、さらに社内DXが進まなくなります。
社内DXは業務プロセスにデジタル技術を導入する取り組みであり、現場で働く社員の協力が欠かせません。業務のデジタル化に否定的な感情を持つ方もいるため、社内の共有はしっかりと行うことが大切です。
DX人材の不足
DX推進には、デジタル技術やデータ活用に精通するIT人材や、各事業部門でDXの取り組みをリード・実行できるリーダーなどの「DX人材」が必要と言われています。
しかし、IT人材や優秀な人材は給与の高い大企業に集まる傾向があり、中小企業ではDX人材が不足している現状です。DX人材が不足すると、DXの取り組みをスムーズに実行できないため、社内DXが進まない要因となります。
社内DXを成功させるためのポイント5選
社内DXは、単に取り組みを進めるだけでは成功せず、ポイントを押さえて実行する必要があります。
特に社内DXが進まない要因を抱えている企業は、要因に対して適切な対処を行うことが重要です。
ここでは、社内DXを成功させるためのポイントを5つ紹介します。
(1)DXの方針と目的を明確にする
社内DXを行う際は、最初に「DXをどのように・どの分野で進めるか」「DXで何を実現するか」を明確にすることが大切です。DXの方針と目的を明確にしなければ、社内DXの取り組みを計画的に進められません。
たとえば社内DXの目的を「オフィスワークの業務効率化」と設定することで、次に目的を実現するための方針を決められます。ペーパーレス化や業務プロセスの自動化といった取り組みの中から、自社に合った方法・ツールを選べるでしょう。
社内DXの方針・目的を定める際は、自社の現状や部署ごとの課題についての分析も大切です。課題を発見して社内DXで解決を図ることにより、社内DXの効果やメリットが分かり、DX推進につなげられます。
(2)経営層がDXに関する情報を社内に発信する
社内DXは特定の部署やチームに任せるだけではなく、経営層も積極的にかかわりを持ちましょう。社内DXにおいては経営層が社内DXの必要性を理解し、DXに関する情報を社内に発信することが重要です。
社内DXは企業にとって新しい取り組みであるため、社員全員が理解を示してくれるとは限りません。DXの取り組み内容や効果に疑問を持ったり、環境の変化に恐れを感じる方も出てきます。
経営層はDXについての説明会や研修を開催し、社員がDXに関心を持ち、理解しやすくなる環境を作りましょう。社員にDXの必要性が浸透することで、社内DXの取り組みを全社的に進められます。
(3)DX人材の確保・育成を行う
社内DXを成功させるためには、DXを推進できるだけのスキルを持つDX人材が欠かせません。採用活動によるDX人材の確保はもちろん、社内での育成も行いましょう。
社内での育成は、IT人材向けの社員教育と、リーダー人材向けの教育を行う必要があります。
IT人材向けの社員教育は、自社が属する業界や事業についての知識を習得させる内容です。IT人材が自社の経営戦略・ビジネスモデルを深く理解することで、自社に合ったDXの取り組みを進められます。
リーダー人材向けの教育は、DX推進チームのリーダーに必要なリーダーシップやスキル、DXリテラシーなどを習得させる内容です。リーダー人材がDXの取り組みをリード・マネジメントすることで、デジタル技術が現場で受け入れられ、業務効率化などの効果を引き出しやすくなります。
(4)社内システムの見直し・刷新を行う
社内システムを導入している企業は、社内システムの見直し・刷新を行いましょう。老朽化したシステムは業務効率を下げたり、無駄な維持管理コストがかかっていたりする可能性があります。
社内システムの見直し・刷新を進める際は、新しい社内システムの検討も必要です。現場で働く社員の意見も吸い上げつつ、自社の業務内容に必要な機能がある新しい社内システムを導入しましょう。
新しい社内システムの導入により無駄なコストがカットされ、業務効率化・生産性向上を実現できます。
(5)課題解決に適したツールを導入する
社内への情報共有やDX人材の育成といった社内DX推進の課題は、ツールの導入によって解決できる可能性があります。自社のDX推進における課題を分析し、課題解決に適したツールを導入してみましょう。
ツールの導入は、業務プロセスのデジタル変革を進める社内DXの第一歩です。たとえ小さな課題であってもツールによって解決できれば、DXの効果を社員が身近に感じられます。ツール導入によってDX推進の意義を浸透させることで、より大きな課題もDXで解決できると信じるようになるでしょう。
ツールの導入後は、かかったコストと効果の分析や、社員の反応を調査することが大切です。ツールの費用対効果が大きく、社員に広く活用されている状態であれば、社内DXの第一歩として成功と言えます。
社内DXの推進に役立つツール
社内DXの推進に役立つツールはさまざまな種類が存在します。下記に挙げる代表的なツールを参考に、自社の課題解決につながるツールを導入しましょう。
ツールの種類 | 概要・主なメリット |
チャットツール | チームのやりとりや連絡をチャットで行い、容量の少ないデータの共有もできる |
オンライン会議ツール | オンライン会議の開催・参加ができ、リモートワーク推進につながる |
タスク管理ツール | メモ・リマインド・共有などの機能で担当業務の管理をサポートする |
ナレッジマネジメントツール | 個人の知識や業務上のノウハウをストレージなどに蓄積し、社内での共有・活用を可能とする |
RPAツール | データ入力などを自動で行い、業務負担の軽減が期待できる |
経費精算ツール | 経費精算の処理をデジタル化し、申請・確認・承認といった工程をスムーズに行える |
BIツール | 蓄積した社内データを活用してレポート作成・ダッシュボード化などを行い、ビジネス上の意思決定をサポートする |
会計ソフト | 講座情報・取引明細の仕分けなどを自動化し、会計業務を効率化できる |
人事管理システム | 人事情報の一元管理や人事評価の精度向上により、人事管理を効率化する |
ERPシステム | ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を一元管理し、効率的な活用を可能とする |
CRM | 顧客情報の管理や接点の履歴・内容などを管理し、営業・カスタマーサポートを支援する |
MA/SFAツール | マーケティング施策の立案や営業活動の支援などを行い、マーケティング・営業を効率化する |
オンラインストレージ | クラウドにデータを保管し、社内での共有を可能とする |
ツールを検討する際の注意点は、ツールの導入にも時間やコストはかかることです。操作方法や業務での使い方などを教育する必要もあり、社員がツールに慣れるまでは業務効率が一時的に落ちる可能性があります。業務への影響が大きいツールの導入は、繁忙期を避けることがおすすめです。
また、ツール導入はあくまでも社内DX推進の過程段階であるため、ツール導入を目的化しないようにしましょう。ツールによって業務のデジタル化が進んだように見えても、導入目的の課題を解決できなければDXの効果が得られません。
ツール導入後は必ず、ツールによって課題が解決できたか、DXの効果は見られたかを分析しましょう。
社内DXの推進におすすめの業務アプリ作成ツール「@pocket」について
社内DXの推進にはDXの意義の浸透や社内への情報共有、DX人材の確保・育成などさまざまな課題があります。社内DXをスムーズに進めるためには、課題解決に適したツールの導入が必要です。
社内DXの推進には、業務アプリをノーコードで作成できる「@pocket(アットポケット)」がおすすめです。
@pocketはドラッグ&ドロップで部品を配置するだけで、簡単にアプリ作成ができます。必要な機能を備えた業務アプリを作成すれば、社内DXの課題をスムーズに解決できるでしょう。
@pocketは、全体の進捗管理ができる「かんばんビュー」や、データの集計・分析機能が充実している点も特徴です。データを一覧表・グラフにしたり、ダッシュボード形式で表示したりも可能であり、CRMやSFA/MAツールなどの支援ツール作成にも対応しています。
@pocketでは、本番同様の機能を使える30日間の無料トライアルを用意しております。社内DXを推進できるツールをお探しの方は、@pocketの無料トライアルをお試しください。
まとめ
業務プロセスにデジタル技術を活用する社内DXは、DX推進に取り組むための第一歩です。近年はさまざまな企業が、ペーパーレス化や業務プロセスの自動化といった社内DXの取り組みを進めています。
社内DXの成功には、DXの方針・目的の明確化や、経営層によるDXに関する情報の発信、DX人材の確保・育成などが欠かせません。
また、社内DXの推進に課題を抱えている場合は、課題解決に適したツールを利用しましょう。「@pocket」は、社内DXに必要な業務アプリを簡単に作成できる、おすすめのツールです。